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東濃地域では、団子の形をした五平餅がよく食べられている=恵那市大井町の五平餅店「あまから」で
つぶしたご飯を串焼きにした郷土料理「五平餅」。岐阜県東濃地域や長野県南部、愛知県三河地方などの郷土食とされる。地域によってわらじや団子の形だったり、しょうゆやみそベースだったりと形や味はさまざま。そんな五平餅の語源や、各地域にどうやって伝わったのかを探った。
◆語源は団子?
五平餅の語源は諸説ある。五平さんという名の人が初めて食べたからという説や、形が神事で用いる「御幣」に似ているためなど。他にも、形が五角形で平べったいから、などの説もあり、はっきりしたことは分からない。
東濃地域では五平餅を「ごへいだ」とも呼ぶ。恵那市北部では、五平餅といえば団子の形。団子の「だ」を取って、「ごへいだ」と呼ぶようになったという。一般的に、五平餅の材料がうるち米で、もち米でないということも「ごへいだ」と呼ぶ理由の一つとされる。
語源や呼び方がさまざまだが、食べる時期については定説がある。恵那市で創業55年の五平餅店を構える老舗「あまから」の2代目店主、西尾良雄さん(70)は「いなかで新米が取れた秋ごろに食べたり、お客さんにふるまったりして、定番化していった」と説明する。
◆長野-愛知に
恵那総合庁舎の中津川・恵那広域行政事務組合が2005年に編さんした観光パンフレット「五平餅味栗毛(くりげ)」によると、郷土食としている地域は、南信州の長野県木曽町、伊那市から、愛知県の奥三河までの一帯。岐阜県内は、東濃地域のほか、可児市、八百津町が入るが、岐阜、高山、郡上市などは「圏外」とされる。
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愛知県豊田市の五平餅専門店五十店舗が加盟する「とよた五平餅学会」の天野博之さん(46)は「奥三河から信州を走る中馬街道を中心に、五平餅の文化が広まった」と推測。「五平餅の食文化が、東濃にあって、西濃にないのは、中馬街道を通る人々の行動範囲の西端が可児市と八百津町くらいまでだったためではないか」と説明する。
◆クルミや生卵
五平餅の形や味が地域で違うのはなぜか。恵那市で五平餅の歴史や文化を調べている柘植弘成さん(72)=恵那市三郷町=は「街道に関係がある」と指摘する。
中津川市苗木から、八百津町黒瀬をつなぐ黒瀬街道は団子の形。中馬街道沿いの恵那市上矢作や同市串原、豊田市などは、楕円(だえん)形のわらじ五平。中山道沿いは、きりたんぽのように長い串にご飯を握り付けた形や小ぶりの団子の形をしている。味付けは、たまりしょうゆやみそがベースだが、各地域でクルミやゴマ、生卵、地蜂といった地域の特産品などを入れ、味に工夫がされている。
柘植さんは「木曽川で分断されていても、街道を通じて交流があった。五平餅の食文化が広まったのは、街道での行き来があったから。ただ、家庭の味は大体、お嫁にきた奥さんの味になるので、いろんな形や味が点在しています。そこを楽しむのもまた面白いです」と語った。
(篠塚辰徳)
![うるち米をつぶすキリの木を持つ柘植弘成さん=恵那市三郷町で]()
うるち米をつぶすキリの木を持つ柘植弘成さん=恵那市三郷町で
<五平餅> ご飯をつぶして楕円(だえん)形のわらじや団子の形にし、串にさして焼いた郷土料理。たれはしょうゆやみそを下地に、ゴマやクルミ、ショウガ、にんにくなどでアレンジを加える。古くから、南信州から奥三河までの一帯で郷土食として愛されてきた。