
独特の形のミュージアムの前で写真を撮る家族連れ
遊び心あふれる空間
昨年6月、岐阜県多治見市笠原町にオープンした市モザイクタイルミュージアムが好評だ。規模は小さいのに、来館者が東海地方を中心に全国から訪れている。当初目標の年間2万5000人を大幅に上回り、既に12万人を超えた。
生活のさまざまな場面で使われるモザイクタイルは50平方センチ以下の小ぶりな装飾用陶磁器の薄片。昭和30、40年代に盛んに輸出した笠原町は今も全国一の産地だ。
ミュージアムが目に飛び込んできたときは、チャーミングな外観に思わずほほ笑んでしまう。設計したのは、各地でユニークな建物を設計している建築家、藤森照信さん。タイルの原料を掘り出す粘土山をイメージしたデザインはジャガイモにも見え、童話の世界のよう。手前に芝生が広がり、多くの来館者が記念写真を撮っている。
近づくと、土塀のような壁はぬくもりを感じさせ、ちりばめられたタイルがきらめく。展示は最上階の4階から見学するのがお勧め。通路の薄暗い階段を上方の光に向かって上がる。展示・事業担当の職員、村山閑(のどか)さんは「洞窟の中を進む感じは、わくわくしてほしいという藤森さんの思いから」と説明する。

自然光が差し込む空間にモザイクタイルの製品が展示され、楽しい4階=いずれも岐阜県多治見市笠原町で
4階の展示室は一転、自然光が降り注いで明るい。地元有志が集めたコレクションは、美容院のカウンターや洗面所、銭湯の壁、家庭用の浴槽など、どれも模様や絵がかわいく、遊び心たっぷり。「年配の人には昭和の風情が懐かしく、若い人には新鮮なようです」と村山さん。
光や影のうつろい、無機質になりがちなミュージアムとは違う触りたくなる空間が楽しい。触れる展示も多く、一部の特別展を除いて撮影も自由、みんな思い思いにスマホを手に笑い合っている。中でも人気は、おびただしいタイルをすだれのようにつないだしゃれたオブジェ。
タイルの歴史や製造工程を紹介する展示も。1階の体験工房では、有料で写真立てなどタイルを使った簡単な工作が楽しめ、休日などは子どもたちの笑顔がはじけている。ショップでは、多種多様なタイルも販売。自宅でも小物作りやインテリアに活用してもらおうという計らいだ。 (井上昇治)
▼ガイド 開館は午前9時から午後5時まで(入館は閉館30分前まで)。休館は月曜(休日の場合は翌日)と年末年始。観覧料は常設300円、高校生以下無料。タイルで飾った写真立て(500円)などを作れる体験工房も。公共交通機関で行く場合はJR多治見駅から東鉄バスで約20分。東草口行き、曽木中切行きで、モザイクタイルミュージアム下車。多治見市モザイクタイルミュージアム(電)0572(43)5101
(中日新聞夕刊 2017年5月18日掲載)